道具を愛することは、
くらしを愛するということ。

いそがしい毎日の中にも、ささやかな幸せに包まれていたい。 家で過ごす時間が増えたからこそ、日々くり返されるシーンの中でも、ほんのりと心躍らせたい。 その瞬間が、私に充実感をもたらしてくれる。そんな気がする。

たとえば、生活の中にこだわりのアイテムを揃えることもそのひとつ。
洋服、インテリア、そしてキッチン道具。
いつもそばにある存在だから、見た目や便利さだけじゃなく、お気に入りのモノを選びたい。

好きな人と過ごす時間が心地いいと感じるように、好きなアイテムに囲まれていると、心が満たされてゆく。
もちろん日頃のお手入れだって欠かせないけれど、それもひとつの愛情表現だと思う。

道具を愛することは、日々のくらしを愛するということ。
大好きなものと一緒に、丁寧に暮らすことで、それを使う自分のことも、ちょっと誇らしく感じられる気がする。
そんな私らしい毎日を、これからも大切にしたい。

堺の歴史と伝統産業

大阪・堺市は「ものの始まりなんでも堺」と言われるほど、日本を代表する歴史や文化の始まりの地とされています。古くは5 世紀に、仁徳天皇陵古墳に代表される古墳群が築造。その際に、鍬や鋤などの鉄製道具をつくる職人が多く堺に定住し、後の技術・文化の発祥地としての基礎ができあがったと言われています。その後、16世紀には日明貿易・南蛮貿易の拠点として繁栄。多くの職人の皆さんによって「刃物」「注染・和晒」「線香」など様々な伝統産業が受け継がれています。

堺打刃物・堺刃物

プロの料理人の多くから選ばれているという切れ味鋭い「堺打刃物」。誕生のきっかけは、16 世紀にポルトガルから伝わったタバコの葉を切る「タバコ包丁」にありました。

その切れ味は、後に江戸幕府から「堺極(さかいきわめ)」という印を入れて販売することを認められ、やがて調理用の片刃包丁にも派生していきました。

ほぼ全ての工程が職人の手仕事によって成り立っています。用いられているのは、真っ赤に熱した軟鉄や鋼を金槌などで叩き延ばして鍛える「鍛造」という技法。素材を叩くことで密度が増し、極上の切れ味と耐久性、そして美しさを生み出しています。
刺身などのやわらかな食材でも繊維や細胞膜を壊すことなく切れ、素材のうまみを中に閉じ込めることで、食感を損なうこともありません。さらに、切った食材が刃から離れやすい点も高く評価されています。

注染・和晒

泉州地域は古くから木綿の栽培が盛んで、中でも石津川が流れる堺市毛穴(けな)・津久野地区は「和晒」の名産地として知られています。「和晒」は、木綿の生地を緩やかな水流で2〜3日窯で焚き、脂分や不純物を除去・漂白することで作られます。

現在は工場のボイラーやポンプで作業が行われていますが、昭和中期ごろまでは川の水で生地を洗い、河原には純白の布が天日干しされていました。丁寧な作業によって品質を一定に保たれることで、手触りがやわらかく、吸水性にも優れた生地が誕生します。

そうして作られた生地に手作業で染料を注ぎ込む技法が「注染」です。生地の上に糊で土手を作り、そこに染料を注ぎ込み表裏両面から染めるので、糸の芯まで染まり、風合いのある染め上がりになります。鮮やかな彩りと自然なぼかしが特徴で、手染ならではの奥行きと風合いが醸し出されます。

現在は、手ぬぐい、浴衣のほか、日傘やアロハシャツ、コースターなど各種日用品に用途は広がっています。

線香

16世紀の終わりに中国から製法が伝わり、日本で初めての線香が作られました。

当時の堺は、自由都市として、わが国最大の海外貿易港であり、外国の宣教師によって「この町は大きく裕福であり、商業が盛んであるだけではなく、絶えず方々から人々が集まる諸国相互の市場のような所」と伝えられたほど商取引が盛んな都市でした。

このように、海外から線香の原料を入手しやすかったこともあり、また、堺は「泉南仏国」といわれるほど、京都、奈良に次いで寺院が多いことも、いちはやく線香の製造をはじめた要因と思われます。

堺の線香は、選びぬかれた天然の香料の調合が特色で、香の芸術品といわれています。また、香りのブームの中で、室内芳香用など天然香の効能が注目されています。

※堺打刃物、注染(浪華本染め)は国の伝統的工芸品に、堺線香は府の伝統工芸品に指定されています。

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