千利休ゆかりの地で根付く畳文化

堺市近郊で50年近く愛される大江畳店は、初代の大江俊次さんと、2代目の俊幸さんの親子2人で和気あいあいと畳づくりに勤しむ町の小さな工房です。

「堺は千家茶道の祖であり、わび茶の大成者として知られる千利休の生まれ育った場所でもあります。お茶室には畳が不可欠だったことから、堺と畳は深い縁があるんです。『畳のヘリを踏んではいけない』『着物姿で美しく振る舞えるよう1枚の畳は6歩で歩く』など、茶道の作法も畳基準で決められていることが多いんですよ。また、堺市は寺町であることから、畳文化が深く根付いているともいえますよね」

こう教えてくれたのは俊次さん。かつて、利休ゆかりの茶室、南宗寺「実相庵」の畳張替えを任されたこともあるという腕利きの職人です。

「畳」「堺」「大江」をキーワードに新しい「畳のある暮らし」を提案

とはいえ、生活様式の欧米化とともに畳離れは進んでおり、堺市近郊の畳店は年々減少しているといいます。

「畳にはフローリングや絨毯などにはない魅力がたくさんあります。そんな畳文化を若い世代に伝えるために、私たちは時代とともに変わっていく畳店の形を日々模索しています。畳の製作や修理を行う傍らで、畳づくりで培われた職人のい草カット技術や、畳やい草の特徴を知り尽くした経験を活かし、和室がない住宅でも畳やい草の香りを楽しめるような身近で使えるアイテムも製作しています」

こう話す俊幸さんは、日本の伝統文化「畳」をモチーフに畳素材を使ってアクセサリーや雑貨などを企画・販売するブランド「classica」の立ち上げや、畳と表具をベースとした和モダンなインテリアをデザインするユニット「washistu.labo」の活動など、さまざまな角度から独自の取り組みを行なっています。

上質なござは見た目も触り心地も段違い

天井が高くとられた開放的な工房に一歩足を踏み入れると、い草の香りがふわり。爽やかで芳醇な独特の香りは、包まれるだけでふっと心が解けます。

「堺は線香の産地として知られていますが、い草の香りも線香に負けないインパクトがありますよね」

こう笑いながら俊幸さんが見せてくれたのは、数種類のござ。それぞれ新品の状態と時間が経って焼けたものが並びます。見れば違いは一目瞭然。一方は、目が密でたっぷりとした厚みがあり、つるつるとした気持ちのよい触り心地。焼けても黄金色の光沢が美しく残っています。対してもう一方は、目が荒く質感もざらざらで、経年劣化したものはムラができ貧相に色褪せてしまっています。

「こうして比べると分かりやすいですが、ござの品質はピンキリなんです。また、同じ産地の同じ農家がつくったものでも、仕入れのタイミングが変わると微妙に色が変わるため混ぜて使うことはできません。それゆえ1〜2畳分だけ余ってしまったござは捨ててしまうしかないんです」

畳の魅力を気軽に体感できるユニークなアイテム

そんな、ござの端材を活かすために生まれたのが、今回、堺キッチンセレクションに仲間入りした「ふむふむ」です。

「畳で人を癒し、皆様の生活をより豊かなものにできないかと日々考えるなかで生まれたアイデアです。上質な畳の感触を味わえるよう、最上級のござの端材を使用しています。キッチンで料理をしているときや、デスクワークで脚の疲れが気になる時など、「ふむふむ」を使えばリフレッシュできるうえ、い草の香りでリラックス効果も期待できます」

また、い草部分の取り替えにも対応しており、ござを裏返したり張り替えることで半永久的に使い回すことができるという畳のエコな側面を「ふむふむ」にも落とし込みました。

「このアイテムで畳を身近に感じてもらい、その魅力を再確認した方々が、将来家を建てる時に、畳が欲しい、和室が欲しいと思っていただけたら嬉しいです」

触れるだけで忘れかけていた日本の伝統文化のすばらしさを思い出させてくれる、不思議な力をもつ「ふむふむ」。このほかにも大江畳店は、大阪らしい遊び心のあるアイデアを次々と発信し、畳の可能性を広げています。

取材・文/土屋朋代 撮影/佐藤裕

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