株式会社河辺商会 2022.10
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身近にあるプラスチック部品をつくる町工場
家電、自動車、AV機器、カメラ……私たちの身近にあるあらゆるアイテムに使われているプラスチック。これらがどこでどのようにつくられているか想像したことはありますか?
堺市に本社を構える昭和30年(1955年)の創業の河辺商会は、そんな身近なプラスチックの成型を手がけるメーカーです。
「プラスチック成型とは、溶かしたプラスチックを、金型などを用いて求める形に固めて仕上げるもの。私たちは、創業以来このプラスチック成型品の製造、技術開発、金型作成に携わり続けています。これらの製品は、家電や自動車などの部品として組み立てられ、皆さんの生活のすぐそばで活躍しています」
こう自社を紹介してくれたのは代表の福田康一さん。河辺商会の4代目です。
独自技術で付加価値の高いプラスチック製品を生み出すことで大手家電メーカーや大手自動車メーカーに信頼される河辺商会。工場では、さまざまな形のプラスチックが次々と生産されてきます。ひと目見ても何のどこの部品か分かりませんが、聞けば「自動車のシフトレバーのプレート」や「ボールペンのグリップ」など、見たこと、触ったことのあるものばかり。
「近年では、金属とプラスチックを混ぜることで塗装せずにシルバーの金属調の外観をつくる“塗装レス”の技術や、EV車の開発で必要不可欠な軽量化を追求した技術、材料の再利用といった環境に優しいものづくりにも注力しています」
販路を広げるべくB to Cに新たに挑戦
そんな河辺商会にとって初の自社製品となるのが、今回、堺キッチンセレクションにも認定されている、まな板になるお皿「CHOPLATE(チョップレート)」です。これまでB to Bのビジネス一筋できたところを、国内での生産案件が減少傾向だったことから、販路を広げるべく新たな分野に挑戦を試みたのがきっかけだそう。
「技術には自信がありますが、私たちにはゼロから企画を考えるノウハウがありません。そこで相談をもちかけたのが、プロダクトデザインを手掛けるTENTさん。私たちと何度も話し合いを重ねてくれましたが、なかなかコンセプトが決まらない。何しろ当初私たちは、これまでつくってきたものの延長でVRなどハイテクなものばかりをイメージしていました。でもそういったものは自社で完結しないんですよね。「今ある機械で内製化できるもの」「売れることではなく、まずは自社商品を世に出すこと」をゴールに決めたところ、この“まな板になるお皿”に行き着いたんです」
独自の技術で生み出す唯一無二のテクスチャー
そこからはブレることなく、これまで培ってきた技術をフル動員して開発を進めます。
まずは形。
「皿として扱いやすく、まな板としても成立するよう、僅かな曲面を縁に施しました。液体が滴れることなく、食材をカットするときにも包丁が引っかかりづらい最小限の高さに設計しています」
そして素材。
「食器として使い続けられる耐久性と軽さを求めさまざまなプラスチックを試しましたが、どうしても安っぽくなってしまうのが気になりました。そんな中、SPS樹脂というスペックの高いプラスチックがもっともしっくりきたんです。それでも強度をもたせるため配合しているガラス繊維が表面に浮き出る模様に納得いかず、何度も試行錯誤を重ねた結果、高級感と重厚感のある美しい色味と風合いを出すことができました」
こうして生まれた「CHOPLATE」のシンプルな趣は、計算しつくされた実用の美。中心から広がる独特の模様とマットな表面が、食材を際立てます。刃こぼれしづらいのにナイフ傷は目立ちにくいという絶妙な固さと質感は、この素材でしか出せません。さらに電子レンジもOKというのも嬉しいポイントです。
まな板を出すのが面倒な時、ちょっと切ってそのまま盛り付けて食卓に出せるのは忙しい現代人の強い味方。洗い物も減るのでキャンプなどアウトドアにも最適です。そんないいことづくめの「CHOPLATE」は、2021年だけで3万枚を売り上げるヒット商品に。
堺のものづくりに新たな風を吹き込む
「堺市やその周辺エリアには町工場も多く、ものづくりの意識が高いですよね。みなさんがいろんなことに挑戦しているので刺激になります。各ジャンルのプロフェッショナルが身近にいるので、何かアイデアを形にしたいと思った時に相談できる横のつながりがあるのも心強いですよね」
「CHOPLATE」という革新的なアイテムで、堺のものづくりに新たな風を吹き込む河辺商会から、今後も目が離せません。
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