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2025/10/31

株式会社梅栄堂 2025.10

新風薫るお香の世界:
梅栄堂とKEITA MARUYAMAが繋ぐ伝統とモード

堺は約400年前、南蛮貿易の港として栄えた地です。沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)などの香木が世界中から集まり、薬種商の知見と結びつくことで「線香づくり」の文化が生まれました。堺にベトナム領事館が存在するのは、香木を含む日本にない物資の交易を通じて、古くからベトナムとの間に密接で不可欠な関係を築いてきた歴史的な背景を示す象徴でもあります。

伝統が裏打ちする梅栄堂の品質

梅栄堂は、この地で江戸時代1657年より360年以上続く老舗メーカーです。漢薬問屋として創業し、やがてお香や線香の製造を専門に展開してきました。

梅栄堂の強みは、長年にわたり受け継がれてきた揺るぎない品質と伝統にあります。同社を代表する唯一無二のロングセラー商品には、明治時代中頃の商標制度において、お香・お線香の現存維持されている商標の中で最古と記録されている「九重香」(1903年商標登録)をはじめ、「好文木」(1921年商標登録)、「開運香」(1967年商標登録)があります。これらの銘品は、伽羅(きゃら)・沈香・白檀といった天然香木を中心に使用した調合を得意としており、各宗総本山からも御用達を賜るなど、確かな品質で長年多くのユーザーに支持されています。

伝統とモードの越境コラボレーション

そんな伝統の街・堺に新しい風を吹き込んだのが、ファッションブランド KEITA MARUYAMA とのコラボレーションです。

この企画は、梅栄堂が「若い世代にもっと香りの魅力を知ってほしい」という願いと、ブランドデビュー30周年を迎える丸山敬太氏(KEITA MARUYAMA)が「香り」という未開拓の領域に挑戦したいという思いが重なり実現しました。

両者を結びつけたのは、丸山氏のクリエイションが持つ「オリエンタルな世界観」と、梅栄堂が培ってきた香りの世界観との高い親和性です。丸山氏は、コレクションにおいて日本の四季を表現することも多く、伝統的な美への造詣が深いデザイナーであり、洋風デザインが主流のファッション業界の中でエキゾティックで東洋的な世界観を得意としてきました。この高い親和性が、「伝統×現代」を体現するコラボレーションの決め手となりました。

丸山氏は実際に堺の本社を訪れ、原料や保管されている歴史的資料を見学したうえでデザインを考案。その結果、パッケージはインテリアとしても成立する美しさを持ち、伝統的な香りの世界に“オリエンタルなモード”の感性をまとわせた、モダンで洗練されたデザインとなりました。

文化の架け橋としての香り

梅栄堂はKEITA MARUYAMA以外にも、手塚プロダクション(ブラック・ジャック、鉄腕アトム)やゴルゴ13、工業デザイナーの奥山清行氏など、デザイン・カルチャー・エンタメといった異業種と積極的に手を組み、新しい香り文化を生み出しています。
例えば、『ブラック・ジャック』の香りは、医療や生命をテーマにした作品世界を表現するため、東洋医学に通じる漢方素材(オリエンタルハーブ)を中心に調香されました。

これは「香りは、漫画や映像では伝えきれないもの。キャラクターの世界を、香りを通して感じてもらえたら」という梅栄堂の願いの現れです。

取締役 中田宗克さん

線香づくりの現場から見える、丁寧さの美学

本社から車で5分ほど走った場所に、原料の調合から練り、成形、乾燥、そして束ねるまで、線香づくりの全工程を一貫して行う工場があります。この建物は築約70年の歴史を持ち、今なお現役で稼働しています。

その外観は、成形された線香に自然な風を通し乾燥させるためのベカコと呼ばれる通風弁があるのが特徴です。

このベカコの「隙間具合」は、かつて周囲に住宅が少なかった時代、職人が線香の乾き具合を繊細に調整するために非常に重要で、今では使われなくなりましたが伝統的な管理方法の名残でもあります。

歴史と伝統が息づくこの工場の前で車を降りると、すぐにふわっと品の良い香りが漂ってきました。

入り口で迎えるのは、瓶に入った原料の数々。原料にはインド産の老山白檀や、ベトナム産の伽羅、漢方やスパイスなど。特に伽羅は、その歴史的な価値と品質の高さが際立っています。かつて徳川家康や織田信長、豊臣秀吉といった戦国武将は、この良質な伽羅や沈香を競ってコレクションし、東南アジアの国王宛てに、分けて欲しいと書簡を出していたほどです。特に徳川家康は、この香木を単なる富の象徴や嗜好品としてだけでなく、薬の原料としても活用し、自身の健康管理や長生きのために好みの薬やお香をブレンドして調合していたという、多くの歴史的資料が残されています。

香料の配合はすべてグラム単位で厳密に管理され、その秘伝のレシピを知るのは、社長のみとのこと。原料は高価であり、わずかな差が品質に影響するため、職人たちは「丁寧に扱う」ことを何より大切にしています。特に手作業で調合される高級品や超高級品の中には、1グラムあたり10万円近くに及ぶ原料もあるため、量り間違いを防ぐ目的で工場長を中心に複数人が対応するなど、厳密な管理体制が敷かれています。

生地を捏ねる工程では、混ぜすぎると粘りが出すぎたり、また水分が飛んでしまい折れやすくなるため、長年の経験による感覚で職人がその繊細な“止め時”を見極めています。

製造過程で曲がりや不良が出た線香は、粉砕し再利用するなど、限られた高価な原料を大切に使い切る生産体制が整えられています。

乾燥工程では、空洞構造で通気がよく、ムラなく乾燥できるダンボールが使用されます。しかし、数週間にわたる乾燥期間中、線香はまだ“生きている”状態であり、湿度が高いとヘビのように曲がってしまうこともあるため、職人は天候を見ながらこまめに見回り、変化に迅速に対処します。

最後の「束ね」作業では、一本ずつ曲がりや折れを検品し、重さを計って結束します。見た目は乾いていても芯まで完全に乾燥していないため、後曲がりを防ぎ箱詰めしやすくするために「イソ」と呼ばれる紙の帯で固定する工夫が施されています。

若い世代へ――香りのある暮らしを

線香製造一筋、入社41年のキャリアを持つベテラン職人の加藤浩司さんは、堺の線香産業が盛んな土地柄で育ちました。幼い頃から線香に触れる機会が多く、自然な流れでこの道に進んだそうです。

そんな加藤さんが製造で最も重視するのは、「香り」と「形」の二点とのこと。 
「香りは目に見えません。でも、人の心には深く残ります。だからこそ、線香はできるだけまっすぐに仕上げたいんです」。
この「まっすぐさ」には、単なる見た目の美しさ以上の意味が込められています。

梅栄堂は「お香のイメージを変えたい」と願っています。KEITA MARUYAMAとのコラボレーションは、まさにその願いを形にしたお香であり、“自分の時間を整えるもの”としての提案です。

瞑想、読書、気分転換、就寝前のひとときなどに。お香が日々の暮らしの中で心を豊かにする存在へと変わりつつあります。

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