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2025/10/31

株式会社山脇刃物製作所 2025.10

鋭くもしなやかなものづくりの姿勢

「問屋業」の垣根を越えて

堺の刃物は、各工程を異なる職人が担う「分業制」で作られています。「鍛冶屋」が鋼と地金を鍛接・成形し焼き入れまで行い、「刃付け屋」が研ぎを担当し、最後に「問屋」が柄付けや銘入れ、出荷までを行っています。

昭和2年に創業した「山脇刃物製作所」は元々は問屋業を担っており、どの工程をどこの職人に任せるか、その組み合わせで多種多様な包丁を開発してきました。

時代は進み高齢化や職人の数が減る中で、この分業制は新たな局面を迎えます。それは、分業の一環で元々外部に依頼していた刃付け作業の内製化でした。

刃付けは包丁の切れ味を左右する要の工程であり、刃物の生産量を拡大するために必要な変革でした。そのために、自社工場も新たに設立し一念発起して取り組んできましたが、「伝統技術の指導は機械のように一律に理論化できず、難易度が高かった」と代表の山脇良庸さんは語ります。

そんな変革と努力を重ねてきた山脇刃物製作所も、あと2年で創業100周年を迎えます。

創業者である先代は福井県出身で堺の刃物屋に丁稚奉公し、22歳頃にこの堺の地で独立して以来、一筋に刃物づくりを続けてきたそう。

話は、なぜ堺で刃物づくりなのか?に広がりをみせます。

起源は仁徳天皇陵の土木工事に必要な鍬や鋤などの鉄製工具の需要が高まり、鍛冶や製鉄の職人集団が堺に集まり、鉄鋼製造の拠点となったことから。そして職人だけでなく、出雲(島根県)で作られた良質の玉鋼が多く堺に供給されたことなどが鉄製工具や包丁産地としての基盤となったそうです。

精鋭の職人たちは、切れ味鋭く持続する刃を目指し、そのものづくり精神は今も受け継がれています。


「硬くて長切れ、丈夫で錆びにくい。一本あれば一生使える包丁を目標にしています」と山脇さんの言葉から、歴史に裏打ちされた自信が感じられました。

使い手に配慮したものづくり

片刃包丁は切れ味抜群ですが、刃先が繊細で欠けやすく、手入れも必須。料理人でないと扱いが難しいため、一般家庭には両刃包丁を提案しています。

今回認定された【郷右馬允義弘】 粉末ハイス鋼割込 三徳包丁 エラストマー柄は、錆に強く、鋭い切れ味が長続きする利便性を追求し、非常に硬い特性の「HAP40鋼」を採用。

使い手への配慮は刀身だけにとどまりません。

包丁にとって切っても切り離せない水気。そんな環境でも浸水・腐食に強いエラストマー樹脂を柄に採用。滑りにくく程よいグリップ感もあり、抗菌性も向上させています。

新たな挑戦を続ける中でも伝統的な材料、技術を守る方針は一貫して大切にしており、そこには「伝統的なものは現役で必要とする人が多いため残す」という考え方がありました。


新旧両方に取り組み、どちらかに偏らないバランスを重視する姿勢から、過去と未来の使い手を大切にする心意気が伝わってきました。

出会いはYoutube。新風舞い込むものづくり

今回の訪問の中でも重要な刃付けの工程を見せてくれたのが入社5年目の若手職人の出雲巧真さん。わずか5年で刃付けの全工程を担当できる凄腕の持ち主です。

きっかけを尋ねると、「高校生の時にYouTubeで会社を知り、見学や体験を経て応募しました」とのこと。中学時代から伝統工芸やものづくりに興味があり、魚を捌き、包丁を研ぐ経験があったそうですが、伝統的な仕事への入口が現代的な接点だったことに驚かされます。

彼が最も難しいと語る工程は「ひずみ取り」。自分の目を信じ、刃の曲がり具合をハンマーとたがねを用いてまっすぐに整えられるようになるまで、長い時間と経験の積み重ねが必要だったそうです。

鋭くもしなやかな姿勢

山脇刃物製作所の職人さんの姿から感たのは「鋭くもしなやかな姿勢」でした。金属、しかも刃物を扱う現場でありながら、人柄は柔らかい。しかしながら、その内側には一貫した強さと鋭い感性が潜んでいました。

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